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二次オタからKpopへ移住

天使にならざるを得なかった

 天使にならざるを得なかったのだ。

 

地位・権力・金、すべてがあった。

我儘に振舞ってもついてきてくれる人がいた。

なんでも叶えられた。

でもなんでもできてしまったから、中身が空っぽだった。

 

地位・権力・金で解決できないものがあった。

心の、技術の豊かさがあった人類に嫉妬した、憧れた。

“生きている”人に嫉妬した、憧れた。

 

五奇人のトップであったかつての朔間零は“魔王”と呼ばれていたにも関わらず、人から慕われ、愛され、才能までも持った完璧なヒトであった。

白くなくても、天使でなくても、人をつなぎ止めておける・人の心を鷲掴みできる力を持ったヒトだった。

 

英智は勇者にはなりたくなかったけれど、魔王の座は既に朔間零のものであって学校という名の国を統治していた。

だから朔間零に嫉妬した。

だから、潰した。

 

 英智のやり方で王座が掴み取れていなかったらそれは英智のやり方が間違っていたことになるが、どんな卑怯な手であったとしても王座が掴み取れてしまった。

歓声を浴びていられて王座に居られるというのは英智のやり方が全く間違っていたわけではないと思わざるを得ない。

つむぎは、英智は己の幸福のために、自分の人生をすこしでも良いようにしようと努力しただけであって、それは否定してはならないし、否定することは悪であると言っている。

つむぎみたく、英智は悪くない、それが英智のやり方だっただけと心から言えるように人にはさまざまな考え方があるのである。

きっと英智はその理由を使ったのだ。

 

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英智のやり方は全く正々堂々としていないし、推しが輝いていた舞台を落とされたというのはファンにとっての私達にとっては辛いことだが、同時に英智も五奇人に心底憧れて、その場に並びたかっただけで、そのために取った手段なのだ。

 

誰かにとっては悪いことでも、誰かにとっては良いことで。

五奇人の年長組はみんなそれがわかっていたから、大人しく負けに行き、戦場から退いたのだ。

 

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この英智の死にたくない、がんばらなくちゃ、と心の中で自分を鼓舞、励ますような切羽詰まったシーンが印象に残っている。

 

生きることに必死。彼には時間がないのだ

英智は自分自身までも道具だと思っている節があるのではないかと思う。

自己評価が高くなくて、きっと病弱な自分も呪っただろう。

英智は生まれ持った地位や権力以外はポテンシャルを無視しても平凡なのだ。

五奇人のように溢れる才能も心の豊かさも持ち合わせてなくて、努力で固めた自分の実力となんでも言う事を聞いてくれる使用人が居て、特等席は白い病室の白いベッド。

そんな自分が憎かったはず。

もう少し体が丈夫であれば、自分の描いた夢も理想的な形で叶えられたかもしれない。

自分の存在すら悪であった。

 

 短命の家系で、病弱で、人より人生が短いことなんて分かっていたのだ。

病院のベッドから出ている間に成さねばならないことがたくさんあった。

彼には時間がなかった。

生き急いでいた彼のやり方は決して善いやり方ではなかった。

自己中心的で、横暴で、タチが悪い。悪いとしか言いようのないやり方だったけれどきっとそれは本人も自覚済だったことだろう。

それでよかったのだ。

天祥院英智は白く有りたかったわけではなかった。

良、善、正義、勇者、白が正しい・よしとされる世界が嫌いだった。

でも世間的には白が正義とされることが多くて、多数の票を得るために、対立するために白を着た。

勇者のフリをした。

手段を選んでいたら時間がなかったから。

効率的で最も確かなやり方だったから。

元々五奇人の討伐が終わればfineは開散の予定だったから白を脱ぐ予定だった。

fineとは元々曲の終わりを指す意味である。

英智はこの戦いが終われば天使の仮面を被るのをやめて白を脱ぐ予定だったはずなのに、自分が渉に憧れたように、英智に憧れて追いかけてきた桃李の存在によって白を着続けている。

 

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かつての自分のアイドルが渉だったように、桃李のアイドルは英智なのだ。

たった一人でも自分に憧れてくれる人がいるならばそれは立派なアイドルで。

誰よりも生きることに、輝くことに精一杯で、誰よりもアイドルになりたかった英智にとって桃李の存在は英智の罪の意識を少しでも軽くしてくれる存在になっているだろう。

これから先も、決して白を脱ぐことはできなくなってしまったけれど、自分が誰かに憧れられるアイドルまで上り詰めた英智にとってそれは仮面の白ではなく、立派な白になっているのではないだろうか。