全ては王への敬意で
瀬名泉が海岸線を歩いている。
それだけですごく絵になるし、それは息を呑むほど美しい光景なんだなって頭に浮かぶ。
iPodから伸びたイヤホンを耳に添えて海岸線を歩いている……
それだけで泣けちゃうね。
あんさんぶるスターズ!皇帝の帰還、小説書き下ろし『lion heart』を読み終えました。
ここから先、完全にネタバレを含みますので、
未読の方はご注意ください。
わたしは瀬名泉のことを天才だと思っていないし、器用でもなんでもないと思っています。
言い方はあまりよろしくないけれど顔がいい、スタイルがいい凡人。
だけどポテンシャルが高くて、努力に裏付けられた自信を持っている。
だれよりも努力を惜しまなくて、自分に厳しくてストイックな瀬名泉が愛おしくて仕方がないです。
瀬名泉って基本的に自分に対する評価は高くないと思うんです。
誰かに褒められたらみんなの前では当たり前でしょ?なんて言うと思う。
だけれどそれは当たり前、にまで持ち上げた努力の成果の表れで。
自分に自信を持つために、なんでもないかのように振る舞うために、瀬名泉の価値を高めるために必要なことだったのかもしれない。
瀬名泉は努力の天才なんだろうな。
決して後ろを向かずに前だけを向いてひたすら努力を重ねて、自分に満足のいくところまで持っていく、これがどれだけ難しいことか。
それをやってのけた瀬名泉だからこそ、いま、アイドルとして輝いているんだと思います。
lion heartの海岸線を歩きながらiPodで自分の昔の歌声を聴く瀬名泉。
ここでも、ダメだった頃のことも記録して、自分の成長の指針にすると考えていて、決して自分の美しくないところをなかったことにしない姿勢にすごく感動した。
モデルは完璧にできても歌は下手くそだった瀬名。
それに対してレオは歌は調子外れで面白い、でも声は大好きだっ♪って瀬名のことを肯定している。
瀬名泉って誰かに認められたくて、自分を認めたくて努力していると思うから、隣で純粋に、素直に気持ちを伝えてくれるレオの存在は大きかったんだなって改めて実感した。
そんなレオと自分を比較して、あいつみたいに恥知らずじゃないから〜、ひねくれものだから素直に好意を示すこともできないけど。なんて言っている。
決して本人に伝えたり、感情に出したりはしないけれど、心の中では、レオの作る曲は好きだったよって。
レオの作った曲に合わせて歌えることが、俺の幸福だって。
レオは変わり者でまともに会話してるところなんてあまり見たこともないけれど、レオを表すものは"曲"であって。
嫌いなものだらけの瀬名の世界で、その曲を好きだって言っているのだからそれはなかなかないもので。
レオの存在は瀬名にとっての支えであって。
自分のことを心から好きだって、綺麗だって言ってくれて、肯定されて、愛されて、生まれてきて良かったと思えるぐらいの青春を与えてくれたレオが、錆び付いて、へし折られてしまった。
自分のことを肯定して、愛してくれるレオに助けられたから、それを『なかったこと』にはしたくないという一心で、前を向いて歩いて行った。
感謝の気持ちを素直に出すことは瀬名にはできないから、レオの代わりにKnightsのリーダーとして決闘しているんだと。
瀬名がKnightsを守り抜いている、リーダー代理の座を降りないのも全てはレオへの感謝、尊敬、愛でしかなくて。
王を守るための騎士であり続ける、全ては王に対する敬意でKnightsはいまもそこに在り続けてるんだなと。
Knightsは終わらないよ。
瀬名の努力は決して裏切らないよ。
このあとにKnightsはまた、生まれ直せるから。
生まれてきてよかった、なんて思えた青春はこれからもまだ続いていくよ。
Knightsを守ってきてくれてありがとう。
きっとレオにも気持ちは伝わっています。